とある法務部員の備忘録

IT企業で法務をやっている独身アラサー。法務系のネタ、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

企業法務キャリア論 第2回「求められる法務人材像」

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企業法務_キャリア

(2016年6月12日公開)

 

 前回の記事はこちら

 

 企業法務キャリア論の第2回目のテーマは、「求められる法務人材像」です。

 このテーマで以下の目次に沿ってあれこれと書いてみます。

 

 

法務の業務内容

 業種や企業規模などによっても異なるかもしれませんが、法務の業務としてまず挙げられるのが、「契約関連業務」です。おそらくどの企業でも、契約書の審査や作成、交渉等は法務が行っていると思います。

 高度な契約書(M&Aにおける基本合意書など)や、普段取り交わすことの少ないイレギュラーな契約書については、外部の顧問弁護士などに依頼するかもしれませんが、日常的に取り交わしている定型的な取引基本契約書等については、法務がドラフトの作成や修正を行い、営業担当者と相談しながら、取引先との間で契約書の文言を検討し、最終的な合意を目指します。

 …ここで、ちょっとした余談です。契約書の交渉は、どちらの書式で取り交わすかという点からスタートするんですが、お互いの力関係が大きく影響します。力関係的に上の立場にある方が契約書書式を提示し、場合によっては修正を受け付けてくれないケースもあります。悔しい思いをすることも多々ありますね。

 

 ここから先は、企業によりけりですが、契約関連業務以外にも、社内規程の整備、コンプライアンス研修、株主総会や取締役会などの準備・手続、紛争対応、アライアンス・M&A、ライセンス(許認可)取得、知財管理・運用、リスクマネジメント、内部統制などが法務の業務として挙げられると思います。

 企業によっては、上記のうち、知財関連業務を専門に取り扱う「知財部」を独立して設けていたり、コンプライアンスを中心に行う部署があったりと様々です。ここらへんの裏方の業務は分掌が微妙なところで、組織マネジメントの問題も孕んでいます。 

 

求められる法務人材とは

 僕は、現在在籍している会社を含め、前職でも法務を経験し、いくつもの法務求人を見たり、面接もたくさん経験してきました。その経験を踏まえ、企業がどのような法務人材を求めているのか、という点に触れていきたいと思います。

 

① 豊富な経験と法的素養

 企業が、外部から法務人材を採用する場合、まず求めるのが「経験」です。そのため、法務の求人を見ると、「企業法務経験〇年以上」といった縛りをかけているケースが多く、未経験者では書類選考を通過するのも相当厳しいと思います。

 なお、企業によっては、「キャリア採用枠」とは別に「ポテンシャル採用枠」というものを設け、法務経験が無い or 浅い人を採用している場合もありますが、その場合でも、高い法的素養が求められます。

 ここでいう法的素養とは、単に法的知識があるということを指すのではなく、具体的事案に即して、どのような法令が適用されるのか、どのような法的問題点やリスクが潜んでいるのかという点を的確に把握することができ、その法的問題点・リスクに対して、どのような解決策を講じれば、その問題を回避・防止することができるか、仮にその法的問題点・リスクが顕在化した場合に、どのような対応策を講じるべきかという点を、法的ロジックを用いて的確に判断・実施できる能力のことを指します。

 司法試験を目指していた方であれば、論文試験対策などで、事実の把握、論点の拾い上げ、規範定立、当てはめ、といったトレーニングを重ねてきたと思いますが、そのトレーニングがもろに活かせる分野だと思います。

 

② 折衝能力

 法務は、社内・社外を問わず、色んな人と関わります。営業の人と契約書の文言を検討することもあれば、取引先との間でトラブルが生じた際に顧問弁護士と打ち合わせを行うこともあります。

 また、法務は、事業活動を牽制する役割を担っていますので、営業担当者などに対して、時に耳が痛くなるようなことも言わなければなりません。時に意見が割れてしまうこともあるでしょう。そのような場面に遭遇しても、スムーズに意見を取りまとめることの出来る交渉力・折衝能力も法務には必要不可欠な資質です。

 「法務は嫌われてなんぼ」「常に褒められるような法務になってはいけない」という考え方もあるぐらいですから、「言わなければならないことは言う」という気概のもと、状況に応じた柔軟な対応を求められるポジションといえます。

 

③ ビジネス的感覚・牽引力

 法務といえば、いわゆるバックオフィス(間接部門)の一つであり、「裏方」「事務職」というイメージがあるのも確かです。

 しかし、実際のところは、事業部門とともにビジネスを創り上げていく気概が求められます。そのため、「法的リスクを回避していれば良い(予防法務)」「法的リスクが顕在化した場合に、その対応さえしていれば良い(臨床法務)」という考え方だけでは不十分です。

 僕が選考を受けたとある会社の面接の際、法務部長さんに対し、「法務として一番やりがいを感じるのは、どのようなときですか?」と質問したところ、「法務として新規事業の企画立案から携わり、その新規事業が成功したとき」と回答されていました。その過程におけるドラフトの作成やチェックは、あくまでも法務の仕事の一部分であって、真の目的はビジネスを成功に導くことであり、法務もその役割を担っているという非常に感銘を受けたお話でした。

 この話に代表されるように、多くの企業では、法務に対してもビジネスを牽引していく姿勢を求めています。そのため、法的知識がどれほど豊富でも、ビジネスマンとしての感覚が欠落している人は敬遠されるのではないかと思います。

 

④ 語学力

 国際法務部門と国内法務部門とが明確に業務分掌されている企業であれば別かもしれませんが、グローバル化が進み、国際取引が盛んに行なわれるようになった現代にあっては、大抵の企業が海外企業と取引を行っており、法務を採用する際、国際法務を取り扱うことのできる人材を求めているケースも多いです。

 そのため、法務を採用するにあたり、英語や中国語といった語学力を求める企業も多いように思います。但し、あくまでも個人的な意見ですが、法務に求められる語学力は、コミュニケーション能力も勿論重要であるものの、国際契約に特化した能力の方がウェイトが大きく、TOIECなどのスコアはあまり参考にならないと思っています。

 何故なら、契約書で使われる英語はかなり特殊だからです。ネイティブの人ですら、ちんぷんかんぷんな内容が書かれていることが多々あります。例えば、「Contract」と「Agreement」は、日本語に訳すと、どちらも「契約」とか「合意」といった意味になるかと思いますが、英米法の観点から言うと、両者は異なる概念です。しかし、ネイティブの人に、「Contract」と「Agreement」の違いを聞いても、おそらく大半の人は答えられないと思います。また、日本の契約書には見られないような英文契約独特のルールや、英米法の知識も求められるため、単に英語が堪能というだけでは足りません。ちなみに、ある英文契約書の内容につき、海外の友人に質問したところ、「全く分からない」という回答が返ってきたこともあります(笑)

 また、国際法務の場合、現地の法律事情や弁護士事情などに精通していることも要求されます。このあたりは経験がものを言うので、未経験者ではカバーできないかもしれません。

 

⑤ 必要のないもの

 ちょっとした余談ですが、逆に必ずしも必要のないものが「資格」です。以前、別の記事でも書きましたが、とある大手企業の面接にて、「資格は必要ないし、持っていたからといって何の特別扱いもしない」とはっきり言われたこともあります。

 法務と聞くと、何か資格が必要なのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、全然要りません。何故なら、弁護士や司法書士などの資格がなければ対応できない問題なんて、日常的に起こるわけではありませんし、仮に起こったとしても、その都度、外部の専門家に依頼すれば済む話だからです。今は、インハウスローヤーも増えていますが、有資格者が社内に常駐している必要はありません。

 現に、僕は、法律の資格を一つも持っていません。ビジネス法務検定も受けたことがありません。資格を取得することが仕事をするうえで役立つものであれば取得するかもしれませんが、現状その必要性を感じていないです。

 そのため、法務に就職するために資格を取ろうとしている方は、「資格を取ること」を目的化しないように気を付けた方が良いと思います。その資格を取得する過程で習得した知識やノウハウが重要なのであって、資格そのものは特に重要ではありません。就職してから、そのことを強く実感すると思います。

 

結びに

 第2回「求められる法務人材像」いかがだったでしょうか?僕の経験則に基づく部分もあるので、あまり参考にならないかもしれませんがご容赦ください(;^ω^)

 

企業法務キャリア論第3回はこちら↓