とある法務部員の備忘録

IT企業で法務をやっている独身アラサー。法務系のネタ、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

Youtuberヒカル氏のVALU炎上問題についてIT法務が思うこと。

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 どうも、まさぽちです。

 

 以前、Youtuber ヒカル氏の動画にハマっているという記事を書いたんですが、現在、物凄い炎上を起こしていますね。。この件について、一応、IT業界で法務を務めている身として、思っていることや感じていることを書いてみたいと思います。

 

 ちなみに、厳密に言うと業界は違いますが、広いくくりで言いますと、ヒカル氏が執行役員を務めるVAZ社は同じIT業界であり、その勢いは聞き及んでいます。

 んで、あるとき、営業担当者に「ヒカルくんの動画好きなんですよねー」という話をすると、VAZ社との繋がりがあったらしく、「よかったら要ります?」ということで、ステッカーを頂きました。

VAZ

(しれっとパソコンに貼らせて頂いております)

 

 というわけで、業界的に近しい位置にあるため、一連の炎上問題は、法務として無視出来ないわけです。なお、ヒカル氏をはじめ、VAZ社が公式に発表している情報、一連の報道の中で明らかとなっている情報以上のことは知りません。そのため、2017年8月27日現在において公表されている情報を前提として、この記事を書いていることにご留意ください。

 

 

いちファンとしての苦言

 私が、まずもって気になったのは、「何故ヒカル氏らは、VAを高値で売り抜け、自分たちだけが利益を得たと誤解されるような行動に及んだのか?」という点(これは法律論云々ではありません)。

 

 ヒカル氏といえば、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの大人気Youtuberです(その他、ラファエルさん、禁断ボーイズのいっくんもYoutuber界で不動の人気を築いています)。自身のチャンネルで配信している動画の広告収入や、いわゆる「企業案件」と呼ばれるインフルエンサー広告での収入に加えて、自身が執行役員を務めるVAZ社での報酬などもあるはず。その年収はウン億円とも言われています。

 んで、今回の売り抜けによって、ヒカル氏らは数千万円の利益を得たと言われていますが、ヒカル氏らの収入から考えれば、詐欺を疑われるようなリスクを冒してまで、そのような利益を得るメリットなんて何もないはずです(実際、本人もそのように説明しています)。

 

 真意は本人たちにしか分かりません。VAを高値で売り抜け、そこで得た利益を、株主(VALUER)に還元しようと思っていたのかもしれないし(後掲インタビュー記事中の森代表の発言の中に、そのようなことを伺わせる記述もある)、後日、その行動の意味をちゃんと説明するつもりだったのかもしれない。しかしですね。いちファンとしては「もっと自分の立場や影響力を考えて行動出来なかったのか?」と非常に残念に思います。

 ヒカル氏の動画では、店長との楽しい掛け合いを見て、いつも和ませてもらっており、これからも楽しい動画を期待していたのに、以前と同じようには見れないかもしれませんね。。頑張って欲しいとは思いますが。

 

 はい。ここまでは、いちファンとしての意見でした。失礼しました。

 

主にVAZ社の事前・事後対応について

 私が、次に疑問に感じたのは、主にVAZ社の事前・事後の対応についてです。

 

 こちらのインタビュー記事に掲載されているVAZ社の森代表の発言によれば、

  1. ヒカル氏らがVALUに登録していたことは知っていたが、どんな意図で開始したのかは知らされていなかった。
  2. 外部専門家及び法律専門家と連携して事実関係の確認を行い、プレスリリースを発表している。
  3. ヒカル氏ら所属Youtuberに対しては、自らが起こした騒動について収束を図るように話しているが、そのやり方は委ねている。
  4. 今までは、所属Youtuberの活動について逐一報告を求めるような体制はとってこなかったが、今後はこのようなことがないように対策を取っていかなければならない。
  5. VAを売却したことで株主から批判が集まることは想定できていなかった。
  6. 法律の専門家に相談し、今回の行為は詐欺にあたらない、法律に抵触していないという結論が出ており、これを説明していくしかない。
  7. ヒカル氏は買い戻しをすることで、VALUの件に関しては一旦は最善を尽くしており、その上で自分が世間を騒がせ、関係者に迷惑をかけてしまったことに関しては、自分がいかに世の中に貢献できるか、社会に貢献できるかを見せることしかないと思っている。

 

 とのことです。私は、この発言を聞いて、正直なところ、VAZ社のリスクマネジメントは、とても褒められたものではないと思いました。以下その理由です。

 

① 引き金はマネジメント不足

 上記のうち、まずは1、3、4の発言について。

 森代表は、ヒカル氏らがどんな意図でVALUを始めたのかも、VAを売却することも知らされていなかったとのことですが、所属Youtuberの普段の活動を管理していない理由のひとつとして、「私たちはYouTube上のマネジメントをするプロダクションですから」と説明しています。私は、この発言が、今のVAZ社内での力関係を如実に表わしていると感じました。

 例えば、テレビタレントを養成して、テレビ局に売り込んでいきたいと考えている芸能プロダクション事務所があったとして、所属タレントのテレビ番組内での振舞いや発言、パフォーマンスだけをマネジメントする事務所があるでしょうか?芸能プロダクションの世界を全く知らない者の意見で大変恐縮ですが、おそらく、普段の私生活においても、品位を損なわせるような発言・行動を慎むようにマネジメントするはずです。

 

 しかし、VAZ社は、ヒカル氏らのように既に人気のあったYoutuberらが会社の中心となって回っています(現に、ヒカル氏は執行役員としてVAZ社の経営に参画しています)。そのため、上下関係とまでは言いませんが、当初からVAZ社はヒカル氏らの人気Youtuberをコントロールできず、コントロールする気もなかったように思うのです。上記3でも、炎上の収束を本人たちに委ね、自らの発想で解決する方法を考えてほしいと話していますが、「自分たちの手には負えない」というようにも聞こえます。

 このように、事前対応として、Youtuberの普段の行動をマネジメントできていなかったのですから、今回の炎上は起きるべくして起きたものだと思います。

 

② 初動対応に見る様々な疑問

 仮に所属Youtuberをちゃんとマネジメントしていたとしても、何かしらの問題は起きます。これはどの業界・企業にも共通する問題であり、だからこそ、炎上に対する事後対応が極めて重要になってくるのですが、私が見る限り、VAZ社は、炎上リスクを適切に想定できていませんし、それに対するリスクヘッジも検討・準備できていません。それが、2、3、5、6の発言及び初動対応から読み取れます。

 

 まずですね。VAZ社は、外部専門家・法律専門家と連携して調査を行い、8月17日にプレスリリースを発表していますが、この時点で(というか今も)まだ騒動は収まっておらず、それどころか、炎上の最中です。ヒカル氏らに対する猛烈な批判が集中している真っ只中ですよ。この時点で、「VALUER への優待を設定すると言った事実はなく、実際に設定をしたことはない(欺罔行為を行っていない)」「インサイダー取引ではない」といった、自分たちにとって有利になる事実を示して釈明するなんて正気の沙汰ではないです。火に油を注いでいるようなものです。

 「詐欺だろ」「インサイダー取引だろ」と追及されて、「詐欺ではない」「インサイダー取引ではない」と反論したくなる気持ちも分からなくはないですが、最初のプレスリリースは、「世間をお騒がせしてしまったことに対するお詫び」に徹し、事実関係については引き続き調査を行い、しっかりと事実関係が確認できた段階で、時期と内容を見定めて出すのが鉄則です。初動からしておかしい。

 

 また、外部専門家・法律専門家と連携した調査についても疑問が残ります(なぜ『顧問弁護士』とか『外部弁護士』と言わずに、『法律の専門家』と言うのかと突っ込まれていますが、そこは正直どうでもいいです)。

 森代表は、騒動を知った後、8月16日の朝にヒカル氏と電話で話し、その後、法律の専門家を交えて事実関係を確認し、翌17日にプレスリリースを出していますが、法律の専門家が、たった1日聞き取り調査をしたぐらいで、その内容をプレスリリースで発表しても良いと判断するとは到底思えません。もし、それを了承したのだとしたら、「本当に法律の専門家か?」と疑います。おそらく顧問契約を結んでいる顧問弁護士などではなく、VAZ社やヒカル氏らに対して、何ら契約上の責任を負わない外部の弁護士等であり、法的見解を聞かれたから答えた…という感じじゃないでしょうか。その後のことは知らないよってな具合に。これも想像でしかありませんが。。

 いずれにせよ、いざ何か問題が起こった際に、それをちゃんと相談できる外部専門家がおらず、そのような外部専門家との連携も取れていなかったように映ります。法務の立場から見ますと、本件は顧問弁護士による対応だとはとても思えません。そして、もし、日常的に法的アドバイスを受けられる顧問弁護士がいないのだとすれば、法的リスクに対する考え方が相当甘いと思います。

 

③ 炎上収束のポイントはそこじゃない。

 また、VAZ社およびヒカル氏の炎上を収束させるための観点がズレています。

 森代表は、上記6のとおり、「法律の専門家に相談し、今回の行為は詐欺にあたらない、法律に抵触していないという結論が出ており、これを説明していくしかない」と発言し、後日、ヒカル氏もTwitter上で、弁護士ドットコムの記事を紹介し、詐欺罪ではないと釈明していますが、法的見解をぶつけるべき相手と炎上が起こるメカニズムを全く分かっていないように思います。

 

 自分たちは違法ではない、詐欺ではないと思うなら、それでいいんです。堂々としていればいい。真実として心の底からそう思うなら一歩も譲る必要はない。それでも、「これは詐欺だ」と主張する人がいるのであれば、裁判において明らかにしていけば良いだけの話です。法的見解をぶつけるべき相手は、原告や検察官や裁判官であって、世間ではありません。ただ、どのような事実があったのかという点については、これを説明する義務があるので、然るべき時期を見て、然るべき内容を発表する必要があると思いますが、あくまでも事実を摘示するだけで、それに対する法的評価はしない。

 なぜなら、炎上は理屈ではなく憎悪や批判感情によって引き起こされているからです。感情的に怒っている人に対し、理屈で対抗することの虚しさをご存知ありませんか?理屈で対抗すれば、何を言い訳してんだと更に逆上させる要因にもなりかねませんし、反論の糸口を与えることにもなります。

 

 ネット炎上は、得てして粗探しです。その人の身元が特定され、SNSなどでの過去の発言が掘り起こされて、そこを攻撃されます。攻撃することが目的化しており、納得できるかどうかは問題ではありません。現にそういった攻撃が起きています。どちらの言い分が正しいかという議論の場ではないということをちゃんと認識すべきだと思います。

 

さいごに

 繰り返しになりますが、ヒカル氏と店長との掛け合いが好きですし、ああいう動画をこれからも観たいと思っている一人です。だからこそ「なんでこんなことになっちゃったの?」という思いが強く、残念でなりません。ほんとに。