とある法務部員の備忘録

IT企業で法務をやっている独身アラサー。法務系のネタ、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

書籍レビュー(6)「数字でわかる会社法」

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書籍レビュー_数字でわかる会社法

 本日ご紹介する書籍は「数字でわかる会社法」。

 本著は、リークエの共同著者の一人である田中先生らによる力作です。会社法の基本書としてリークエや田中先生の会社法を使用しており、且つ、株式資本施策(M&Aなど)に携わる実務家の方に是非一度は読んで欲しい本です。

 

理論と実務の強力な架け橋

 リークエ自体が、理論と実務の架け橋的な内容なんですが、本著は、そこを更にもう一歩、いや、百歩ぐらい進めたような感じ。

 ロースクール時代に、取締役の善管注意義務、募集株式の有利発行、組織再編に反対した株主の株式買取請求の公正価格などを学んだことがある方なら分かると思いますが、「会社の損害」とか「株主の利益」といった曖昧模糊とした概念について、かなり頭を悩ませたと思います(私だけ…?)。

 

 本著では、株主有限責任制度・授権資本制度と債権者保護との関係、募集株式・新株予約権の発行と株主の利害衝突、友好的買収・敵対的買収時における会社と株主との対立関係などの会社法制度における仕組みや背景を、具体的な数値を分析することによって、紐解く書となっています。

 

 その根底として、「会社法の基本書とか判例百選とか演習書だけ読んで、会社法を理解した気になってんじゃねーぞ」という田中先生の思いがひしひしと伝わってきます。

 例えば、業務提携を目的とした第三者割当前に株価が高騰していたにもかかわらず、取締役会が、高騰前の低い価額を1株当たりの払込金額と決議し、新株発行を行った事案(ソニー・アイワ事件 東京高判昭和48年7月27日)について、判例百選の解説では、本件第三者割当は業務提携によるシナジー効果を見越したものであって、 ①高騰した価格からシナジーを反映した部分を除いた部分が払込金額とされれば、新株を発行した会社に生じるシナジーは、既存株主と新株主(新株の割当先)との間で、新株発行後の持株割合に比例して配分されることになり、他方、②シナジー含みの高騰した価格が新株主の払込金額とされれば、新株主がシナジーの恩恵を受ける割合は小さくなる…と記述されていますが、

 

これだけ読んだって何のことか分からねえだろ?

 

 と、160キロのストレートを読者に投げ込んできます(もちろん、そんな乱暴な言い方ではないですが)。

 

 私は、ロースクール時代に、本著のうち、取締役の報酬とオプションのところだけを特に集中的に読んでいましたが、第2章・第3章などは、実務についてから改めて読んでみると、まさに目からウロコでした。ちなみに、実証分析は今でもさっぱり分かりません(笑)

 

意外に知名度が低い…?

 少なくとも私の周囲に、この本のことを知っている人がおらず、ちょっと意外です。

 BLJのブックガイドなどでも、コーポレートガバナンスやM&Aの実務に直結する書籍が多く取り上げられており、そうではなくて、理論と実務の間を弥縫する書籍として、本著のようなものが紹介されてもいいのでは…?と少し思ったりしています(会社法の基本書を紹介するんだったら尚更)。