とある法務部員の備忘録

IT企業で法務をやっている独身アラサー。法務系のネタ、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

書籍レビュー(9)「契約法(中田裕康)」

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書籍レビュー_契約法_中田裕康

 

 民法改正に伴い、多くの民法基本書(特に債権法)がリライトを求められる中、今回は、改正民法に対応した中田先生の「契約法」をご紹介します。

 

 本著の冒頭、日本における民法の制定から、ドイツ民法学説の導入による条文から剥離した学説の発展、現代における契約の実態(民法の機能低下等)を指摘したうえで、民法が改正されるに至った経緯が事細かに記述されており、新民法への導線としては凄くスマートな印象を受けます。

 

 また、現行法の下での議論(例えば、売買契約における特定物ドグマなど)もきちんと言及したうえで、新法の規定を取り上げており(新旧を比較しており)、潮見先生らの編著「Befor/After 民法改正」のうち、契約法の部分について、もう少し紙幅を割いたような内容…という印象を受けます。

 

 あと、部会審議の内容にも言及しているのは地味に有り難い。例えば、契約の補充的・修正的解釈について、研究者側は、当事者による合意(共通の理解・合理的認識)に従って契約の内容を解釈すべきであるとの意見を提出したのに対し、裁判所側から強い反対があったという背景など(中田108頁)。読んでいて「へぇー」というものが多かったですね。

 

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 脚注部分の解説も充実しており、ボリューム感のある仕上がりとなっています。

 

 ちなみに、実務的に関心が高いのは、契約法総論のうち、約款に関するもの(新法第548条の2〜4)ではないかと勝手に想像しているんですが、条文数が少ないですし、判例の積み重ねも十分ではないため、約款に関する記述はサラッとしています(それでも9〜10ページぐらい)。まだ、議論も成熟していないのでしょう。今後に注目ですね。

 

 「購入すべきかどうか」という点ですが、中田先生の債権総論を使用されており、且つ、今回の民法改正に対応した契約法の基本書が欲しいという方は、買って損はないと思います。値は張りますけどね。。

 そうではなく、改正に携わった潮見先生の本が良い!という方は、新債権総論Ⅰ・Ⅱとイエロー本が良いのではないでしょうか(私は、「プラクティス民法 債権総論」が改訂されるのを待ってます)。