とある法務部員の備忘録

某IT企業に勤めるアラサー法務。法律、時事問題、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

書籍レビュー(10)「体系アメリカ契約法」

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書籍レビュー_体系アメリカ契約法

 今回ご紹介する平野先生の「体系アメリカ契約法」は、英文契約のドラフティング前に読む本としては超有名であり、アメリカ契約法のコンセプトを理解することを目的として執筆されています。ご存知の方は既にお持ちかと思います。

 ちなみに、「アメリカ企業はおろか、コモンローの国との取引(契約)すらない」という方は、本著を読む必要はないと思いますし、「アメリカ契約法の仕組みをちょっと知っておきたい」という場合は、樋口先生の「アメリカ契約法」の方が入門書としてはオススメです。また、アビタスなどで、既に米BarExam対策用のテキスト等をお持ちの方は、わざわざ本著を買い足す必要もないと思います(内容としては重複してます)。

 

 英文契約のドラフティングに関する書籍って、世の中に数多ありますよね。「英文契約の◯◯◯」とか言って。こういう類いの本って、大抵の場合、コモンローをベースにしてるんですが、コモンローとかアメリカ法をベースにしてるということをさらっと流して書いていたり(当たり前だろというスタンスで)、内容としてはとっっても薄かったりします。

 そのため、そういう本に書かれていることが、コモンロー以外の国との間で締結する契約にも通用するとの誤解を与えたり、内容としても疑問を完全に払拭できるわけではないので、余計な混乱を招く要因にもなります。平野先生も、別著「国際契約の<起案学>」において、「最近、英文契約のドラフティングに関する薄っぺらなノウハウ本が溢れている」と指摘されています。

 

 じゃあ、例えば、英文契約の背景にあるアメリカ法の学術面を勉強したいと思って、ヒルマンとか、コービンとか、ファーンスワースの本を読もうにも、内容が難解であるうえに英語で書かれているし、そもそも日本ではかなり入手困難で、「Corbin on Cobtracts」とか2,000ドルもするんですよ?ムリムリ(笑)

 そんな状況の中、平野先生が一肌脱いで、邦語でアメリカ契約法を解説したのが本著というわけです。私が知る限り、日本語で執筆されたアメリカ契約法の本の中で一番詳しいです。中途半端なノウハウ本を読むより、まずは本著を読むことを強くオススメします

 

 本著は、冒頭において、アメリカ社会における契約の意義や法源、アメリカ契約法の歴史等について触れた後、契約の成立、救済、法的拘束力、第三者の権利義務の移転、保証責任と続いていきます。全部で600ページほどあります。

 いずれの章も読み応え十分ですが、特に、契約の成立における「取引の交換(bargained-for exchange)」や「約因(consideration)」の考え方、コモンロー・衡平法・不法行為法上の救済、錯誤・詐欺防止法による契約者保護、契約の解釈、口頭証拠排除準則、実質的な履行と重大な違反、保証責任など、日本の民法には存在しない法概念や法制度については、読んでいて勉強になることばかり。初めて大学の講義で民法を学んだときのような新鮮な気持ちになりますね。

 

 また、単に学術面の解説をして終わりというわけではなく、英文契約の起案上の注意点などにも言及されているため、「あー、だから英文契約ではこういう表現を使うのか!」と、納得しながら読みすすめて行くことができます。

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 さらに、参照・引用している文献の数が尋常じゃない。これだけの法律の洋書を読み込むって、途中で心折れなかったんですかね。。私だったら確実に英語が嫌いになると思います…(笑)

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 というわけで、今回、平野先生の「体系アメリカ契約法」をご紹介しましたが、本著を読まれたあと、英文契約のドラフティングに関する別著「国際契約の<起案学>」を読むことにより、さらに理解が深まって効果倍増です。こちらもオススメです(機会がありましたら、こちらの書籍についても詳しくご紹介します)。