とある法務部員の備忘録

IT企業で法務をやっている独身アラサー。法務系のネタ、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

法務系AIクラウドサービス「Holmes」と資金調達について思うこと

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リグシー_500startupsjapan

 昨日に続いて、本日もリーガルテック関連の話です(もしかすると明日も?)。昨日の記事を書いてから1日経つと、次のようなニュースが流れてきました。ほんと、話題に事欠かないですね(笑)

jp.techcrunch.com

 日本初の法務系クラウドAIサービス「Holmes」を提供しているリグシーが、500 Startups Japanから数千万円規模の資金を調達したとのこと。「Holmes」は、クラウド上で、契約書の作成、締結、管理を行えるほか、弁護士が作成した様々な契約書テンプレートを使用することができるというサービス。契約管理に頭を悩ませている大企業法務部のウケが良く、私もこのサービスは純粋に良いと思います。

 

 「おお、日本のリーガルテックもどんどん進化していきますね~!」という話で締め括りたいところなんですが、私が気になるのは、今回の増資が、シリコンバレーの著名アクセラレーター「500 Startups」の日本拠点である「500 Startups Japan」によるものであるという点。

 

 この点について、ちょっと日本におけるリーガルテック市場の展望も踏まえ、あれこれ書いてみます。

 

AI分野でスタートアップが大企業になる道はあるのか。

 実は、上記記事と同日付けでこのような記事もあります。

jp.techcrunch.com

 この記事、「Y Combinatorが、積極的にスタートアップ企業に投資してるけど、10年前と比べて、FacebookやAppleみたいな大成功を収めたスタートアップ企業なんてある?」という趣旨のもので、結論から言うと、「次世代の重要テクノロジーであるAI、ドローン、AR/VR、暗号通貨などの分野は、スタートアップには手が届かない分野になってしまっていて、Googleみたいな巨大企業による世界支配が強まるよ」「このような分野で成功する望みは薄いから、世界的な大企業にバイアウトするのがベストな選択でしょ」という論調です。

 

 実際のところ、今回のようなクラウドAIサービスは、「データの量が物を言うサービス」で、どれだけ優秀な技術者がスタートアップ企業にアサインしても、ビッグ5が有する巨大データを相手にして、国際市場で勝つことなんて正直無理ゲーのように思えます。

 

リーガルテックスタートアップへの出資実績

 そんな中で、リグシーは、パートナーとして500 Startups Japanを選んだわけですが、この選択はある意味正解だと思います。

 500 Startupsには、LawTrades、QuickLegal、CellBreakerなどのリーガルテックスタートアップ企業への出資実績があり、リグシーは、このような "500ファミリー" の一員として、シリコンバレーの最先端のナレッジを吸収しつつ、メンターによるバックアップを受けながら市場での安定した優位性を築いていく道筋が見えています。

 

 仮に、このまま「Holmes」が日本国内でユーザー数を増やし、法務分野での必須ツールと言えるまでに普及・拡大したとしても、今度は、リーガルテックで先を行くアメリカ企業と市場で競合することが予想されますが、リグシーはそこまで見越して出資を受け入れたのではないかと想像します。

 

500 Startups Japanの思い描くエグジット

 500 Startups Japanの代表・ジェームズ・ライニーは、今回の出資に関して、次のようにコメントしています。

「リーガルテック」の波をグローバル環境において感じる中で、日本でその担い手になるプレイヤーをずっと探していました。

(引用元:http://thebridge.jp/prtimes/268244

 

 また、別の記事の取材では次のようにもおっしゃっています。

最近でこそ少し増えてきたとはいえ、国内M&Aの件数はまだまだ少ない。買う側の企業の数が限られていることもあって、日本のスタートアップが目指すエグジットとしてはマザーズへのIPOが主流というのが現状だ。そのIPOも年間100件程度と上限がしれている。エグジット数が少ないのが日本のスタートアップエコシステムの成長にとってボトルネックの1つなのであれば、アメリカ企業が買いやすい座組を用意するのが最も効果的なのではないか。

(引用元:http://jp.techcrunch.com/2015/09/08/500-startups-japan/

 

 言うまでもなく、500 Startups Japanの考えるエグジットは、国内でのIPOでもM&Aでもなく、アメリカ企業によるクロスボーダーの買収です。これまでも、多くの出資先について、LinkedIn、Google、Amazon、Cisco Systemsなどの名だたる大企業に買収されてきた経緯があります。

 アメリカ企業は、日本のスタートアップ企業の買収には忍び足になることが多いとされていますが、リーガルテックなどのAI技術は(冒頭にも申し上げたとおり)寡占化しやすい市場であり、いち早く「シリコンバレー流」を導入し、M&Aを活性化させれば、アメリカ企業による「日本支配」は容易なんでしょうね。

 

まとめ

 まあ、そんなことを言いつつ、このようなリーガルテックが日本国内で発展・普及していくことは喜ばしいことですし、こういったニュースでどんどん盛り上がって欲しいと願いつつ、本日はこのへんで!