とある法務部員の備忘録

IT企業で法務をやっている独身アラサー。法務系のネタ、英語、雑記、ブログ運営などについて自由気ままに書き綴っています。

無罪判決がなぜ凄いのかを解説する【宇都宮市 教師わいせつ事件】

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無罪判決_凄さ

 宇都宮市内の路上で女性の体を触ったとして、強制わいせつ罪に問われていた中学教諭の男性に対し、宇都宮地裁は18日、「女性の証言の信用性に疑いの余地がある」として無罪判決を言い渡しました。

www.sankei.com

 

 中学校の教師が、強制わいせつの罪で有罪判決になれば、それはそれでニュースになったと思いますが、無罪判決でも十分ニュースになります。日本において、なぜ無罪判決が凄いのかを少し解説した後、本件について少しコメントします。

 

起訴されたらほぼ有罪確定

 有名な話ですが、日本の有罪率は 99% です。統計データを厳密に調べた方によると、実は99%じゃないらしいのですが、いずれにせよ物凄い有罪率の高さであることに変わりはありません。つまり、起訴されれば、被告人は、ほぼ確実に有罪判決を受ける運命にあり、無罪判決を勝ち取ることは 1%の奇跡 です。

 

 なぜ、これだけ有罪率が高いのでしょうか。

 元検察官・モトケンさんのブログ「元検弁護士のつぶやき」に詳細な記述があるので(少し古い記事ですが)、こちらを参照しますと、検察官は「確実に有罪にできる事件」しか起訴しないのが原則であるという趣旨のことをおっしゃっています。つまりですね。検察官が起訴するということは、「被告人を有罪にできる十分な証拠を持っています」と宣言しているのと同じです。

 

 また、上記モトケンさんの記事によりますと、「検察官が起訴したということは有罪なんじゃないの?」と口にする裁判官もいるらしく、裁判官から見ても、検察官の起訴とはそれぐらい信頼できるものです。だって、刑事司法のプロが、「確実に有罪にできる」と確信できるほどまでに証拠を集め、証明力を吟味し、弁護士からの反論も考慮しながら検証を行っているわけで、それ自体、裁判官からしたら「頼もしい」と思える要素になります。

 

 少し悪い言い方をすれば、日本の刑事裁判は出来レースであり、最初から結論ありきで進んでいきます。

 無罪判決を勝ち取ることは、例えるならば、番組の中で、坂上忍にけちょんけちょんに批判され、他のゲストや観客全員が、「坂上さんの言っていることは正しい」と思っている状況の中で、坂上忍に果敢に反論し、「…あ、あれ?この人の言ってることも正しくね?」「いや、ていうか、坂上さんの方が間違ってるよ!」と、状況を逆転させるぐらい難しいことなのです(相変わらずたとえが下手やなw)。

 

無罪判決は出世に響く?

 ところで、よく噂に聞くのは、「無罪判決は検事の恥」「出世に響く」というもの。上記モトケンさんによれば、若い検事による無罪判決は大目に見られる一方で、特捜部の起訴で無罪になった場合は、副部長や部長の出世に影響しているかもしれないとのことです。

 

 また、無罪判決を書くことは、裁判官の出世にも響くと言われていますが、これには懐疑的な意見が多いように思います。真偽は定かではありませんが、検察官の作ったレールに乗って事実認定をした結果、有罪になることが多いため、そのように言われるようになったのではないかと想像します。

 

宇都宮市の教師わいせつ事件の無罪判決について

 先般の刑法改正によって、強制わいせつ罪が非親告罪化されるなど、性犯罪の厳罰化が図られました。その流れを受けての本事件なんですが、うーん、どうなんでしょう。泣き寝入りすることの多い性犯罪の厳罰化に乗り出したことは賛成なのですが、「冤罪の多さ」も性犯罪の特徴のひとつであり、被害者の訴追意思なく、検察官の裁量に委ねていいものなのか、疑問のないわけではないです。

 もしかすると、本事件と類似の事案が今後も起こるかもしれず、改正刑法の下でどのように警察・検察が対応するのか興味深いですね。